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2020.08.03

ネイピア数eとテーラ展開

監査役 古川 正志

                                                                 監査役 古川正志

北海道では新幹線小コロナの第三波が始まるような気配です.夏もコロナ騒動で,いつの間にか盛りとなっても気づかないような状態です.今回は少しクールな話を書いてみました.

 

 関数f(x)=axは指数関数と呼ばれます.指数関数は,部分を切り出してあるスケールで拡大すると元の関数に戻ります.つまりどの部分も全体と同じ性質をもつのでスケールフリーと呼ばれます.f(x)=a-xも同じ指数関数でありスケールフリーです.この関数の形は恐竜の首から尾までの形に似ていて,世の中に多く現れます.例えば,売れる本からほとんど売れない本までを注文数の大きい順にならべる,日本の人口の多い都市から少ない村までを並べる,工作機械の工具は先の寿命の残り時間,などです.aの値は2であったり2.5であったりします.

 指数関数を微分すると元の指数関数に戻る関数があります.この関数はf(x)=exと書かれます.この微分を表すとdf(x)/dx=exとなります.ここでeの値は2.71828...となりネイピア数と呼ばれます.2回微分を行うことをdf2(x)/dx2と書きますが,やはりdf2(x)/dx2= exとなります.n回微分するとdf(n)(x)/dx(n)= exとなります.

 一方,大学に入りたての頃に関数の展開を教わったと思います.もっとも使用されるのはテーラー展開です.これは関数の値f(a)についてaから少し離れたところの値を予想するに使用されます.aから少し離れた値をa+xとします.そのときf(a+x)の予想値は

 f(a+x)=f(a)+(1/1!)f'(a)x+ (1/2!)f''(a)x2+ (1/3!)f'''(a)x3+ (1/4!)f(4)(a)x4+(1/5!)f(5)(a)x5+...

と展開されます.i!は1・2・3・...・i(1からiまでの掛け算)を意味します.左辺の1項目は増える前の値,2項目はそこから接線の傾き方向にaからx増やした時の増加させた補正分,3校目は2項目でまだ誤差があるときにaから小さな放物線の値で隙間を埋める補正分,...となります.f'()はf()を1回微分したもの,f''()はf()を2回微分したもの,...,f(n)()はn回微分したものになります.exについてテーラ展開を適用すると

 ea+x= ea+ (1/1!)eax+(1/2!) eax2+(1/3!) eax3+(1/4!) eax4+(1/5!)eax5 +...

となります.ここで,a=0を代入するとe0=1なので上の式は

 ex= 1+ (1/1!)x+(1/2!) x2+(1/3!) x3+(1/4!)x4+(1/5!) x5 +...

が得られます.

 同じようにsin(a+x)をテーラ展開すると,sin()の微分はcos(),cos()の微分は-sin()なので

 sin(a+x)= sin(a)+(1/1!)sin'(a)x+ (1/2!)sin''(a)x2+(1/3!)sin'''(a)x3+(1/4!) sin(4)(a) x4+...

     = sin(a)+(1/1!)cos(a)x-(1/2!)sin(a)x2- (1/3!)cos(a)x3+(1/4!)sin(a)x4+...

となります.ここで,a=0を代入するとsin(0)=0,cos(0)=1なので,

 sin(x) =(1/1!) x - (1/3!) x3+ (1/5!) x5- (1/7!) x7+...

が得られます.cos(a+x)を同じように計算すると

 cos(a+x)= cos(a)+(1/1!)cos'(a)x+ (1/2!) cos''(a)x2+ (1/3!)cos'''(a)x3+ (1/4!) cos(4)(a)x4+...

     = cos(a)-(1/1!)sin(a)x-(1/2!)cos(a)x2+(1/3!)sin(a)x3+ (1/4!)cos(a)x4+...

が得られ,a=0とすると

 cos(x) = 1-(1/2!) x2+(1/4!) x4-(1/6!) x6+...

を導くことができます.sin()の展開は指数に奇数しか使われないので奇関数,cos()の関数は偶数しか使われないので偶関数と言います.

 ところで,高校で虚数という数を教わったと思います.-1の平方根をjとするとjを使用した数を虚数と言います.jは-1の平方根ですからj2=-1です(高校の数学ではimaginaryのiを使用しますがiは電気で電流の記号に使用されますのでここではjを用います).先ほどの指数関数ea+xでxをjxで置き換えてみます.そうすると

 ea+x= ea+ (1/1!)eajx+(1/2!) ea(jx)2+(1/3!) ea(jx)3+(1/4!) ea(jx)4+(1/5!)ea(jx)5 +...

となります.j2=-1, (j)3=-j,(j)4=1, (j)5=j,(j)6=-1,...となりますからa=0の時は

 ejx= 1+ (1/1!)jx-(1/2!) x2-(1/3!) jx3+(1/4!) x4+(1/5!)jx5 -(1/6!)x6+...

    ={1-(1/2!) x2+(1/4!) x4-(1/6!)x6+...} + j{ (1/1!)x-(1/3!) x3+(1/5!)x5- (1/7!) x7+...}

が得られます.右辺の最初の中括弧の中身はcos(x),jに括られた中括弧の中身はsin(x)と同じですから上の式は

 ejx= cos(x) + jsin(x)

と簡単な表現になります.ここでx=πを代入します.πはラジアンと言われる角度の単位で角度180°に相当します.cos(180°)=cos(π)=-1,sin(180°)=sin(π)=0ですから

 ejπ=-1

になります.右辺を左辺に移動すると

 ejπ+1=0

が得られます.このクールな式が映画「博士の愛した数式」の式になります.

 

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