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2025.11.17

コリオリの力(3)

監査役 古川 正志

 この原稿を書いたときは9月中旬をすぎでしたが、11月中旬の今は旭川では雪景色となってしまいました。この雪は今週中には消えそうですが、そうであることを
願っています。あの8月の猛暑が信じられません。

 前回は、静止座標系からみた回転座標系の加速度を計算しました。得られた結果は、

 a = dv/dt
  = (X'' -2Y'ω - Xω^2 - Yω') e-x + (Y'' + 2X'ω -Yω^2 + Xω') e-y

でした。いよいよ静止座標系(宇宙)から見た回転座標系(地球)の運動方程式からコリオリの力とは何かを説明します。

(5)回転座標系の点に加わる外力の静止座標系から見た力の運動方程式
 回転座標系の一点[X Y]にある質量mの物体に加わる力(外力)をFとします。この力Fの回転座標系でのX成分とY成分をF-x、F-yとします。このとき、外力は静止座標系では
 F = F-x e-x + F-y e-y

となります。静止座標系での外力の運動方程式を作成します。一方、力は(質量x加速度)と教わりましたから、運動方程式は、質量mに加速度を乗じて得られますから、

 F = ma

です。前回の結果である、a= (X'' -2 Y'ω - Xω^2 - Yω') e-x + (Y'' + 2X'ω - Yω^2 + Xω') e-y を代入すると

 F = ma
  = m(X'' -2Y'ω - Xω^2 - Yω') e-x + m(Y'' + 2X'ω - Yω^2 + Xω') e-y

となります。ここで、F = F-x e-x + F-y e-yでしたので二つの指揮を比較すると

 F-x = m(X'' - 2Y'ω - Xω^2 - Yω')
 F-y = m(Y'' + 2X'ω - Yω^2 + Xω')

が成立します。右辺の括弧の中の第2項以降を左辺に移行し、書き直すと

 mX'' = F-x + m(2 Y'ω + Xω^2 + Yω')
 mY'' = F-y + m(-2X'ω + Yω^2 - Xω')

が得られます。上記でω^2=ω・ωです。

(6)回転座標系の点の外力に加わる見かけの力
 回転座標系での力をF-c = [F-cx F-cy]、点rの速度をdr/dt = r' = [X' Y']、加速度をdr'/dt = a' = [X'' Y'']とします。回転座標系での運動方程式は力=(質量x加速度)から

 F-c = ma'

すなわち、[F-cx F-cy] = [mX'' mY'']から

 F-cx = mX''
 F-cy = mY''

となります。先程、静止座標系での加速度aの計算で得られたmX''とmY''の値を上の左辺に代入すると

 F-cx = F-x + m(2 Y'ω + Xω^2 + Yω')
 F-cy = F-y + m(-2X'ω + Yω^2 - Xω')

となります。r'-col = [Y' -X']、と置くと、この式はベクトル表現で

 F-c = F + 2mωr'-col + mω^2・r + mω'r

が得られます。これが回転座標系の運動方程式になります。

 F-app = 2mωr'-col + mω^2・r + mω'・r

とおけば

   F-c = F + F-app

となり、回転座標系での力F-cには、点rにおける外力Fに見かけの力(apparent power)F-appが加わっていることがわかります。見かけの力F-appの第1項目がコリオリの力と呼ばれます。第2項目は高校の時に暗記させられた回転する物体の遠心力となります。第3項目はオイラーの力と呼ばれます。回転速度が一定であれば各速度ωは一定ですから加速度ω'は0となります。この式から回転する地球上の力は
  
  地球上の力 = 外力 + 見かけの力

であると結論を得ることができます。見かけの力F-appは

  F-app = 2mωr'-col + mω^2・r

となります。私たちは感じませんが、実は私たちが立っているとコリオリの力と遠心力が私たちにかかって正常に立っている釣り合いを保っていることになります。
 ここで、r'-colとr' の内積を計算すると

  r'-col・r' = [Y' -X']・[X' Y']
 =Y'X'- X'Y'
 =0

となります。従って、回転座標系ではコリオリの力は外力の速度方向に直行する力となります。かつ、方向を考えると[Y' -X']から左側から右向きに直行する力になっていることがわかります。

 地球上の自転(地軸に角速度Ωで回転している)による影響を考えます。地球の赤道付近には温められた気団が存在します。一方、北半球では北極地帯に冷却された空気が存在します。このため、温められた気団は赤道から冷却された気団へと向かいます。この気団の移動は先の座標で言うと回転座標系で[X' Y'] = [0 Y']の方向への速度の外力となります。地球の自転(反時計回り)の回転座標系では、自転に対して速度[Y' -X'] = [Y' 0]の速度のコリオリの力がかかります。つまり、X軸に沿って右から左へY'の速度の力が掛かることになります。右から左へとは西から東へ向かうことで、これが偏西風となります。地球の緯度がφの地点を考えます。緯度φの地点から地球の中心へ引いた直線を考えます。この直線上に私たちは立っています。地球の自転の角速度をΩとしましたが、この回転は地軸に直角に行われています。そうすると私たちが立っている地点の回転速度はこの直線に垂直な平面で回転していることになり、その場での回転速度をωとすると

 ω = Ωcos(π/2 - φ)
  = Ωsinφ

となります。
 これは緯度が0に近いとその場での角速度ωがほとんど0であり、北極付近では描く速度がΩそのものとなるのを意味します。外力に加わる見かけの力F-appは

  F-app = 2mωr'-col + mω^2・r

でしたから、赤道付近ではコリオリの力はほとんど0となり遠心力だけ働いています。このことから赤道付近では偏西風が吹かず、ある程度に緯度が高くなってから偏西風が吹くのが分かります。また、外力に対して左からコリオリの力がかかるので気圧が高い方から低い方へ流れ込む低気圧は反時計回り、その反対の高気圧は時計回りに風が吹くようになりっます。

 天気予報の話から3回にわたる長い話となってしまいました。私の認知症を避ける頭の訓練と思って読んでいただければ幸いです。

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