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2020.03.19

COVID-19 -その2-

                                                                                                  監査役  古川正志

COVID-19は今や世界に拡大する戦後最大の感染症になろうとしています.中国,ヨーロッパ,米国を始め多くに国が国境を閉鎖し始めました.

 ところで前回のブログでマクロの観点から微分方程式による感染のモデルを紹介しました.感染モデルを説明するもう一つの工学的な武器として,複雑ネットワークがあります.

 この学問分野は1980年ごろから始まったもので,きっかけは東南アジアの蛍が同期して(皆同じ周期時間で)点滅するのはなぜかという疑問から始まりました.

 コーネル大学のワッツとストロガッツは,ミクロの視点から蛍の繋がりを考察し,スモールワールドモデルを発表しました.スモールワールドモデルはクラスタリング係数と平均パス長と名付けた二つの指標の値がある値を取るときに蛍の同期が起こる発見しました.クラスタリング係数は,現在のCOVID-19では集団の蛍にどれ位の濃厚性があるかを示す数字で平均パス長は二匹の蛍の間に何匹の蛍が介在しているかです.蛍を感染者に例えると感染モデルとみなすことができます.このモデルでは二つのクラスター間を繋ぐ社交好きの蛍が必要となります.従って,この蛍を止めれば蛍全体の同期は止まります.スモールワールドモデルを人間社会に当てはめると世界は6人で繋がっているというショッキングな結果が実験で確かめられています.

 一方,WEBの繋がり方を調べたノートルダム大学のバラバシは,1サイトのWEBのリンク数(参照数または参照される数)が,べき乗分布(サイトの多い順番数のx乗)になっていることを発見しました.べき乗分布は分かりやすく言えば反比例曲線のような形をしています(恐竜の尻尾のような形).リンク数の多いものからサイトを並べるとこのような曲線になります.べき乗分布の曲線はどの部分でも切り取ってある倍数をかけると元の曲線に戻りますので,スケールフリーとも言われます.これは極端にリンク数が大きいものが2割ほど存在し,他の8割のサイトのリンク数は高々一桁くらいとなります.リンク数の多いWEBサイトはハブと名付けられています.このようなネットワークの構造は,航空機の路線,電力線網,交通網などあらゆるところで発見できます.感染症で考えるとハブを作っている中心を潰してしまえば,感染が起こらないことになり,予防処置としては飛行場の閉鎖などが重要になります.

 今回のCOVID-19はどちらのモデルでも当てはまらないように思えます.実際は世界的に巨大に繋がったネットワークだったのでしょうから,どちらのモデルも部分的には当てはまりますが,国別あるいは地域的に見ると,森林に雷が落ちあちこちから火災が発生したような広がり方をしているからです.火災の延焼モデルに対してはパーコレーションモデル(浸透モデル)と呼ばれるモデルがあり,コーヒをこぼした時にコーヒがジワーと広がるシミュレーションモデルです.雷が落ちた場所が感染症のクラスターに相当するとも,そこから移動した人がスモールワールドを形成していったとも考えられます.

 ネットワークの理論によるミクロな観点から感染モデルを考えてみましたが,今回の感染に対してこうした理論を組み合わせた新しいネットワークモデルが今後発表されるかもしれません.

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