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経営ブログ

2026.02.25

『結果を急がない』という投資

専務取締役 加藤 哲也

2/22に閉幕したミラノ・コルティナ五輪ですが、個人的には男子アイスホッケーでNHL選手が12年ぶりに参加するということで楽しみにしていました。
世界最高峰のリーグでプレーする選手が母国の代表として戦うわけですから熱い戦いになるはずと思っていたら、予想通りハイレベルの戦いが繰り広げられ、カナダとアメリカの決勝ではオーバータイムでアメリカが勝利し、1980年当時スター軍団が揃うソ連に対し大学生中心のアメリカが勝利しミラクル・オン・アイス(氷上の奇跡)と言われたレークプラシッド大会以来46年ぶりの優勝を飾りました。
しかし、私個人の興味はともかく、今回のブログでは日本フィギュア史上初のペア金メダルを獲得し快挙を成し遂げた「りくりゅう」こと三浦璃来・木原龍一ペアを15年以上支え続けた木下グループの「結果を急がない」という育成方針をテーマにしたいと思います。

私はフィギュアスケート特にペアに関して詳しいわけではありませんが、想像するに、ペア競技の技術習得には、個人のスキル以上にパートナーとのシンクロという目に見えない、言語化しづらい積み重ねが必要ではないかと考えます。
これはITエンジニアの成長にも似ていて、特定の言語を覚えるだけなら数ヶ月で可能かもしれません。しかし、複雑なシステム構造を理解し、チームで協力して開発を進め、トラブル時に阿吽の呼吸でカバーし合える真のエンジニアへと成長するには、数年単位の経験と、数多くの「失敗」という糧が必要です。木下グループが「りくりゅう」の成長を15年支援したように、プロフェッショナルを育てるには、近道など存在しないのです。

木下グループの支援は、単なる資金提供ではなかったようで、選手が「失敗しても次がある」と信じられる環境を、10年以上の長きにわたって提供し続けました。
IT組織においても、若手エンジニアが新しい技術やプロジェクトに挑戦する際、「失敗したら評価が下がる」「納期に遅れたら詰められる」という恐怖があれば、挑戦の歩みは止まります。
「結果を急がない」というメッセージは、エンジニア個人やチームにとって最強の心理的安全環境をもたらします。
その安心感があるからこそ、エンジニアは限界ギリギリの高度な技術(りくりゅうで言えば難易度の高いリフトやスロージャンプ)に失敗を恐れずに挑むことができるのです。

今回の五輪、ショートプログラムのミスをフリーで大逆転した二人の姿は、長年培った信頼の勝利だと思います。
効率やコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスばかりを重視する組織では、エンジニアは「交換可能なパーツ」になりがちです。
しかし、木下グループのように「個」と向き合い、時間をかけて関係を築く組織では、エンジニアは「代替不可能な財産」へと進化します。
「この会社で、このチームで、成長したい」。そう思える絆こそが、「りくりゅう」が手にした金メダルにも劣らず最終的にどんな技術よりも強力な、組織の競争力を生むのではないでしょうか。
一方でエンジニアも「りくりゅう」同様に、与えられるのを待つだけでなく支援に応えるべく最大限の努力をすることが重要で、そうすることで企業とエンジニアの互いの信頼関係が醸成されると考えます。

「りくりゅう」の金メダルは、一朝一夕で成し遂げられたものではありません。
それは、可能性を信じて待ち続けた「組織の覚悟」が、個人の才能を最大化した結果です。
私たちも、共に働く仲間の成長に対して結果を急ぎすぎていないかを、今一度問い直してみたいと思います。
信じて、見守り、環境を整え続ける。それこそが、エンジニアという企業の財産を輝かせる唯一の方法なのかもしれません。

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