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経営ブログ

2023.01.10

懸垂曲線(北朝鮮ミサイル -その1-)

監査役 古川 正志

前回,Jアラートと題して北朝鮮弾道ミサイルの軌道を2次曲線で補完し,ミサイルの打ち上げ速度を計算してみました.弾道ミサイルは懸垂曲線を利用した飛行をすると言われています.特に2次曲線である放物線であることが一般的です.懸垂曲線と呼ばれる所以は紐の両端をもちぶら下げるときにできる形状で,ミサイルの場合はこの曲線を上下反転したことになります.

 ところでCAD(Computer Aided Design)では,2次曲線のみならずもっと高い次元の懸垂曲線が曲線を設計する方法として一般的に使用されています.これらの代表的な曲線はベジェ曲線,B-スプライン曲線,NURBS,等です.これらが懸垂曲線と言われる理由は,台形のような骨組みを作りその骨組みの結節点からぶら下げた紐が作る形状の曲線だからです.イメージとしてはテントの骨組みを作り,骨組みの結節点から紐でテントを吊るしたときにできるテントの形状を想像すると良いと思います.CADでは3次か5次曲線が懸垂曲線で使用されます.

 弾道ミサイルの飛行は2次の懸垂曲線であるので,今回は2次のベジェ曲線で前回同様に北朝鮮が打ち上げたミサイルの打ち上げ速度を計算してみました.

2次のベジェ曲線の骨組みは3点になります.すなわち,地上に2点とそれら2点の中間に鉛筆の先っぽのような点(三角形に頂点)をつくります.今回は少し難しいですがベクトルで曲線を表現することにします.今,地上の1点目を

   P0 = [0 0]

とします.[ ]の中の最初の数値はx座標,2つ目の数値はy座標を表しています.次に鉛筆の先(三角形の頂点)の点を

   P1 = [x1 y1]

とします.最後に地上の2点目の点を

   P2 = [4600 0]

とします.x座とy座標はミサイルが飛行した距離とミサイルの高度を表します.P0はミサイルが発射された地点なので飛行距離0 (km),高度は0 (km)なので[0 0]となります.P2はミサイルが落下した点で飛行距離4600(km),高度は0(km)なので[4600 0]となります.P1はミサイルの軌道を引っ張り上げいる点なのでその点の位置が未知であるため[x1 y1]と書きました.準備ができましたので懸垂曲線のひとつであるベジェ曲線でミサイルの飛行経路を表現しますと以下のようになります.

   P(t) = (1-t)2P0 + 2(1-t)tP1 + t2P2

          = (1-t)2[0 0] + 2(1-t)t[x1 y1] + t2[4600 0]

          = [2(1-t)t・x1+4600t2 2(1-t)t・y1]

ここでtは曲線を表すためのパラメータ(媒介変数)でその値は0~1になります.実際の飛行時間をTで表すと,飛行時間は22(min)でしたからt = T/22と考えることができます.鉛筆の頂点の座標はt = 1/2 でミサイルの飛行距離が落下点距離の半分2300(km),最高高度が1000(km)であることを利用して得られます.上の式にt = 1/2を代入すると

   [2300 1000] = [2・(1-1/2)・(1/2)x1+4600・(1/4)  2・(1-1/2)・(1/2)y1]

となります.これから

   (1/2)x1+(1/4)・4600 = 2300

   (1/2)y1 = 1000

を得ます.この式からx1とy1を求めると

   [x1 y1] = [2300 2000]

として曲線を吊り下げる鉛筆の頂点座標が得られます.

これからミサイルの懸垂曲線は高度2000(km)から吊り下げた曲線であることがわかり,その式は以下のようになります.

   P(t) = (1-t)2P0 + 2(1-t)tP1 + t2P2

          = (1-t)2[0 0] + 2(1-t)t[2300 2000] + t2[4600 0]]

          =[4600(1-t)t + 4600t2 4000(1-t)t]

          =[4600t 4000(1-t)t]

ここで初速を計算してみます.実際の時間はT=22tですから

   dT = 22dt

が得られます.上の式を時間で微分すると速度が得られますから,

   dP(t)/dT = dP(t)/22dt

         =(1/22)dP(t)/dt

         =(1/22)[4600 4000(1-2t)]

となります.打ち出しの時はT=0ですからt=0をこれに代入すると

   dP(0)/dT =(1/22)[4600 4000]

     =[209.09 181.18] (km)

となります.初速度vは√{(dx(0)/dT)2 + (dy(0)/dT)2}で計算できるので

   v0 = √ 209.092) + 181.82)

        =277.03 (km)

        =4617.9 (m/sec)

        =13.59 mach

となります.これはJアラートで計算した時とほぼ同じ結果になります.ひとつの問題に対して回答プロセスがひとつでないことが面白いとは思いませんか.

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