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経営ブログ

2013.05.20

職業エンターテインメント

取締役 久末 博昭

 最近の小説には,ある職業を深堀して,そこで働く人達の喜怒哀楽を題材としたものが多いようです。職業エンターテインメントというらしいのですが,世の中にはこんな職業もあるのかと始めて知ることも多く,なかなか興味深いものです。例えば昨年度の本屋大賞をとった三浦しをん作「舟を編む」は,辞書の編纂に取り組む人々の仕事ぶりを淡々と描いていますが,辞書の言葉一つ一つの説明を考えていくという気が遠くなる仕事を,飽きもせず生涯続けるという姿勢に,ある意味すがすがしさを感じてしまいます。

 私はミステリーファンなので,この分野では犯罪に関係する職業,例えば警察官,刑事,鑑識係,弁護士,検事,泥棒,暴力団という分野のプロ達が登場することが多く,知らず知らずの内に,刑事の物の見方や専門用語を覚えてしまいます。医者物といわれる分野は,医学専門用語で読者を圧倒する必要があるので,著者自身が医者出身ということが多いと思います。

 一方経済小説といわれる分野では,実業の世界で活躍する銀行員,保険調査員,会計士や税理士,弁護士,色々な業界での管理者,立志伝中の経営者が主人公になることが多いようです。私がサラリーマンだったこともあるせいか,会社再建のために奮闘する主人公を題材にした小説には感情移入してしまいます。考えてみると,私のような団塊世代は終身雇用の世界を生きたわけで,生涯をとおして経験できた職業はせいぜい5~6種類だっと思います。そのせいか,経済小説に描かれる職業を経験してみたかったという気持ちが読ませるのかもしれません。

 これだけ多種多様の職業が小説の題材になっているのに,どういうわけか,IT業界でのシステムエンジニアを主人公にした小説でヒットした作品はない気がします。専門用語が散りばめられないと迫力が出ないので,やはりここはIT業界出身者にミステリーとして一級品となる小説を書いて欲しいものです。小さなソフト会社で,地道にコツコツとネットワーク制御プログラムを開発し続けてきたシステムエンジニアが,政府の依頼をうけて,悪いハッカー集団の攻撃から,日本の銀行オンラインインフラ防御のために立ち上がる・・・・こういうストーリーは血沸き肉踊ると思うのですが。