昔からミステリー小説のファンで,色々なジャンルのミステリーを読んできました。謎解きの本格派から,シャーロックホームズのような名探偵物,ホラー小説のような怖いミステリー,冒険大活劇,トラベルもの,警察内幕物,時代物もありました。主人公も刑事,探偵,警察官,検視官,新聞記者,大学の先生と,考えてみると本当にバラエティに富んでいます。
最近は好きなミステリーの傾向が変化してきて,ある作家が描く刑事が主役の人気シリーズを好んで読むようになりました。刑事物といっても派手なアクション,暴力シーン,グロテスクなシーン,胸もすくようなトリックの解決はなく,あまりかっこ良くない中年の刑事が,地道な捜査と仲間の協力のもと,最後にようやく犯人を逮捕するという筋立てで,色々な背景をもっている主人公が登場するところがみそです。
主人公が,娘が失踪して離婚したアル中気味の中年刑事だったり,妻を事故でなくして子供を育てるイクメン刑事だったり,まわりに登場してくる脇役達も,こういう人達もいるだろうなと思わせるリアリティと生活感があります。
変化してきた理由は,きっと最後はハッピーエンドでマンネリの安心感があり,中年刑事の心の葛藤に共感できたり,仲間内の罵しりあいや,ちょっとした会話に,心をゆすぶられ,その場にいるような感じになるからでしょうか。特になにげない,刑事部屋でコーヒーを飲む場面とか,相棒の刑事と他愛の無い冗談をいいながら,平凡な事件の調書をたんたんと書き続けている場面,夜中に車中でハンバーガーを食べながら,張り込みをしている場面は,読んでいると映像がうかんできます。神はデイテール(詳細)に宿るとは誰かの言葉ですが,小説の楽しさはこういうところにあるのかもしれません。
若い時は,これから経験するかもしれない人生の場面の先取りのつもりで,ミステリーを読んで,こういう場面に出会ったら,こういうしゃれたセリフを言いたいものだと,えらく前向きだったような気がします。読み終わると,また擬似経験がひとつ増えたような気がして,ジャンルを問わず手当たり次第に読んだものでした。
今は,自分が経験できなかったこと,これから先も経験できそうもないことを,じっと見つめるために,ミステリーを読んでいます。だからあまり現実味のないファンタジー物,残酷物,活劇物は嘘っぽくなって興味がわきません。たとえば,友人とか,ちょっとした知り合いが刑事で,酒を飲みながら彼の苦労話を聞く・・・・そんな感じのミステリーが好きになりました。
これは老化なのか進化なのか分かりませんが,ひとつの読書スタイルではあります。またあるとき突然嗜好が変わって,違うジャンルのミステリーにはまるかもしれませんしが,なぜ変わるのかは,うまく説明できないミステリーです。

